あの山この沢

丹沢、神ノ川矢駄沢(ヤタ沢)
中流部の林道工事の残骸や堰堤で興ざめするが、
水量も多く釜のきれいな小滝が連続する楽しい沢

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堰堤を5つ越して沢に降り立つと、すぐにきれいな釜を持つ小滝

2mトイ状滝

水流の中をシャワー、濡れたくなければツルツルの左側

釜は結構深い

釜を持つ小滝が連続する、この滝は腰まで浸かって滝に取り付く

水量が多いのでこの沢はどの小滝もずぶ濡れになって登れる

脇の岩壁を攀じる

F1、12m滝

F1の落口、きれいな一枚岩のナメ、休憩適地、すぐ上がF2

F2、10m滝

ミニゴルジュとなる

2段10m滝F3、ここはシャワーを避けて登ることはできない

釜のきれいな小滝が続く、釜に入るも淵をヘツルも自由に遊ぶ

釜を持つきれいなナメ滝、このうえで沢はしばらくゴーロとなる

大崩壊地(堰堤工事中)を左折するとすぐにF4、7m滝の倒木

倒木がない時はシャワークライム楽しめた
(2002年8月31日)

小滝が続く

大笄沢を分け左折すると、すぐ真上には堰堤群と林道の橋

旧道の橋をくぐると再びゴルジュとなり、小滝が続く

F5、二条15m滝、左の水流際を登る、左壁のホールドは豊富

F6、8m滝

岩床が続く

狭まった谷は傾斜も増しいつまでも岩床が続き歩きやすい

稜線が見えてくる源頭部はゴーロとなり、ひたすら直上する

目前に稜線が見えてくると、最後は軟らかい泥の急斜面となる
 以下は2007年9月9日、台風9号直撃直後

圧倒的な水量のF3

左岸をへつって水流に突っ込む。右岸は釜に入って取り付く

F3からF4までの間の小滝も水量が多ければシャワーで登る

ちょっとした小滝でも水圧で吹っ飛ばされそうになる

倒木のなくなったF4

コースタイム
神ノ川ヒュッテ550m(5分)矢駄橋560m(5分)堰堤5つ上の河原595m
(15分)大堰堤上650m(5分)F1、12m滝下670m
(20分)正面大崩壊(堰堤)755m左へ(20分)大笄沢出合840m左へ
(7分)旧道橋下890m(10分)F5、2段二条15m滝下945m
(20分)
F6、8m滝1020m(30分)最後のゴルジュ通過1145m
(50分)泥壁から左の小尾根へ1465m(5分)熊笹ノ峰分岐点1495m
(40分)
上の林道875m
(20分)下の林道565m(8分)神ノ川ヒュッテ

2003年9月27日(2007年9月9日追記)
★ここでのF記号は、山と渓谷社刊『丹沢の谷110ルート』にしたがった。但し、同書でF3は2つあるが、上流のF3(15m)は顕著な滝としては判然としないので、これはなしとして扱った。
地元津久井町青根の山仕事の人たちの間では、矢駄沢は「弥駄沢」と記すこともあるようだ。
★神ノ川ヒュッテの車止めゲートから神ノ川林道を5分ほど歩くと矢駄橋に至る。ここが矢駄沢だ。橋の手前でガードレールを跨いで旧道の痕跡のある右に入り、旧道の橋を渡らないで左岸沿いに踏跡にしたがって山に入る。途中奥に滝の見える水量の多い枝沢を渡り、堰堤を4つ(まじめに数えないと分からないまま)越して一旦河原に出て、5つ目の堰堤を右から越す。ここでやっと沢登りの身支度をする。
★堰堤上の河原の奥はすぐに薄暗いゴルジュになって、きれいな釜を持つ小滝が連続する。
どの小滝も容易に越すことができるが、暑ければあえて水をかぶりながら、あるいは淵を必死でヘツリながら、濡れたくなければ滝を避けて岩の重なりに逃げて歩くこと もできる。この沢は、 真夏、雨がしっかり降った後に入ると、ほとんどの小滝も完全にシャワークライミングとなりさらに楽しめる。
★F1大滝の手前の8mの堰堤は右から越すが、ここは完全にルンゼの岩登りとなる。細かいホールドは沢山ある。
F1 は中間部がハングしていて、おまけにその上はツルツルに磨かれているので登れない。左の苔むしたルンゼを上る。上部林道の工事の残骸がこんな所まで流されてきているのには驚かされる。
★F1上は広場になっているので、F1落口やF2を見ながらの格好の休憩地だ。
F2も左のルンゼを登る。
F2を越すとゴルジュの奥にF3が待っている。この2段10m滝は、水量が多ければ、いやがうえにもシャワーとなる。水圧に 抗して水流を登るのが一番簡単だが、左のバンド状を登ればあまり濡れなくてすむ。どちらにしろ釜に腰までは浸かることになる。
☆2007年9月9日、台風9号が丹沢を直撃し豪雨をもたらした2日後、増水したこの矢駄沢を遡行してみた。至る所で林道が崩壊し、車ではゲートまで入れなくなっている。大雨直後には、このF3の通過はなかなか楽しめる。写真で見える左岸をへつって水流右に這い上がり中段で右岸に渡るのが楽だ。右岸をへつるのは難しく釜に入って取り付く(写真 2番目)。右岸バンド上を登るなら濡れないですむ。
★いくつかの小滝を越して、谷が開け、正面に大崩壊後の大堰堤が現れると、沢は直角に左折する。上部林道を歩いてみれば一目瞭然だが、この大崩壊は林道工事の産物だ。以前(1996年)遡行したときには崩壊してなかったし、『丹沢の谷』書にももちろん記録されていない 3、4年前の災害だろう。
★左折したところは狭くなっていて、ここに7m滝がかかっている。これがF4だ。去年は楽しいシャワークライミングのできるすっきりした滝だったが、今年になって、右岸側壁上の木立が倒れこんでジャングルジムのように滝の前に立ちはだかって しまった。枯れはじめた小枝は少し折ってみたが、まだ大雨が何度か降らないと、F4に突っ込む時の"藪払い"はなくならないだろう。
☆(2007年9月9日追記)この倒木は完全に流されていて、きれいな滝に戻っている。しかし、手前の釜は吹っ飛んでしまったか小さく浅くなった。水量が少なければ釜に入って水流左から這い上がって右に抜ければいいのだが、水量が多いと写真のように右壁を攀じ登るようになる。
この滝は手前に釜を持っているので釜に入り、一番左の水流に取り付くのが簡単で、右の緩傾斜のスラブのほうがすべりやすかった。以前はそうだったのだが、今は倒木の幹や枝に乗っかってわけなく右スラブの上に出れる。つまらなくなってしまった。
★さらに小滝やナメを過ぎると、また大堰堤に行く手をふさがれる。堰堤側壁の鉄ハシゴを登る。正面には6、7段堰堤が重なるように立ちはだかる。これが大笄沢だ。沢といえる代物ではなくなっている。流れもない。
★矢駄沢はというと、左折し、これも大堰堤が2段聳え、はるか上空には橋が架かっている。鉄ハシゴで越え、新道の橋をくぐり、さらに人工的水路の中3つこじんまりした堰堤を越え、旧道の 橋をくぐると、やっと沢登りに来た感覚を取り戻せる。
☆橋の下の堰堤は、台風による増水のためか、もう堰堤下の基礎部分が現れてえぐれてしまっている。(2007年9月9日追記)
今でこそ災害後の「治山工事」の結果、荒れた沢を復元できたような見せ掛けとなっているが、以前は先の大笄沢出合から上部は旧道手前まで、広大なガレ(工事のガラ)で、そのガレも林道拡幅新設工事の土砂を単に谷に落とし込んでできたものだったのだ。ガレで沢の底から林道まで斜面のままつながっていた。大笄沢も同様、林道まで工事のガラで覆われていたのだ。道路拡幅で土砂を谷に捨てる→沢の側壁が崩壊→沢もガレる→「治山」のため堰堤を造る→両岸を削る→上部斜面が崩れる→また「治山事業」をする、神奈川県の土木工事業者にとって、さぞや丹沢は金の成るすばらしい山だろう。
★橋を過ぎると、すぐに左から枝沢が10mはある細い滝で出合い、さらにもう1本左から沢が出合うと、2段二条15mのF5となる。いちばん左の水流際が登りやすい。
★F5の上から沢は猛烈な急勾配のゴーロとなる。
★沢が狭まるとF6がある。最後のゴルジュだ。この後ゴーロの中に小滝やナメが続くが、釜のある滝はもうない。
★1250m付近で水は涸れるが、ナメや岩床は1400m付近まで続く。1400m辺りから源頭のガレとなり、最後は泥壁になる。
泥壁を直上して稜線に向かうのがきつくなると、左の小尾根に逃げる。急な小尾根を登り、クマザサ帯 は少し左へトラバース気味に登っていくと、縦走路から神ノ川ヒュッテに下る矢駄尾根コース分岐点(熊笹ノ峰分岐)に直接出れる。
直上した場合、稜線に出た後左に3分も行けば分岐点だ(1996年5月25日)
★この分岐点の南側真下は中川東沢本棚沢の支流だ。はるか下方には中川本流、そして真正面には晴れていれば大きな富士山が見える。
★下山はもちろん矢駄尾根コースが最短。1時間強で神ノ川ヒュッテまで下れる。
★★矢駄沢は中流域の堰堤群や工事後の残骸でかなりつまらない沢になったようだが、そして核心部が終わった後の稜線までの長いゴーロ歩きが人気イマイチの沢にしてしまっているようだが、真夏の暑い時期には、下の林道から上の林道まで約1時間半初心者でも安心してたっぷりとシャワークライミングを楽しめる沢だ。(Photo BBS参照)  「ヤダ〜こんな沢」なんて言わないで、一度は行ってみて。
★上の林道で遡行を打ち切った場合、登ってきた沢から見て林道を左に約5分も下れば、登山道の矢駄尾根コースに交わる。ちなみに林道を右に犬越トンネルまで歩けば、神奈川県と地元工事業者が丹沢をいかに破壊してきたか無残な姿を垣間見ることができる。

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