あの山この沢

丹沢、早戸川大杉沢左俣
出合は3段の堰堤、その上も水流のない涸れた沢、
しかし10m級の滝や大スラブ、巨岩のCS滝の連続する沢
 

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大杉沢出合
早戸川林道終点の
対岸に堰堤で合流


林道砂利道ヘアピン
の所から下降(右)。
ここ(左)に下山。

沢に降りるとすぐに
大ナメ滝、写真は
最上段の10m滝

10mナメ滝

30m以上続く大ナメ
1枚岩の沢床は
白く磨かれている

大ナメ最上部

3mチョックストーン

右岸の岩壁が大崩
壊、崩落した大岩の
重なりを急いで通過

8m滝
これは岩の重なりで
はなく岩壁そのもの

巨大な岩の塊
のような8m滝
左を登る

巨岩帯
2〜5mの巨岩が
重なり合っている

巨岩帯
正面の岩下の枯木
が長さ1.5mぐらい

巨岩帯上の台地
眼下に丹沢観光セン
ターの建物が見える

3段の大チムニー滝
この手前から
水流が現われた

3m以上のチョック
ストーン、ここは登
れない、左を巻く

ミニゴルジュ

かなり急な源頭部

榛ノ木丸山頂

三角点から蛭ヶ岳

整備された仕事道

コースタイム
魚止橋(旧通行止めゲート)595m(5分)林道ヘアピン(下降点)625m
(10分)30m大ナメ上675m(13分)右岸岩壁大崩壊地上730m
(12分)岩小屋群大CS5m滝上770m(10分)大ハングCS滝上835m
ここから水流出る(10分)チムニー小滝群上875m(8分)4mCS滝上895m
水涸れるすぐに右から沢(こちらが本流)900m(30分)尾根1040m
右へ
(30分)大平からの道合流1280m(5分)榛ノ木丸1312m
元に戻る(15分)沢から登り着いた地点→(40分)林道ヘアピン→(5分)魚止橋

2005年4月24日
早戸川林道の終点にあった丹沢観光センターは2004年の9月末で閉鎖され た。林道より下にあった売店やバンガロー、仮設の橋等はすべて撤去されている。本間橋手前山側の宴会棟は残っている。
かつては、この宴会棟入口付近から林道終点までの路肩に駐車して早戸川に入っていたが、2,3日前からうんと手前の「国際マス釣り場」近辺に通行止めの鋼鉄製ゲートができてしまった(ゲート情報)。したがって、まじめにゲート手前で車を止めたなら、そこから林道終点まで1時間以上は歩くことになる。
★このゲート設置に伴い、林道終点のゲートは撤去された。撤去されたというより、こちらにあったゲートを手前に移動したということだろう。
この元ゲートのあった所から旧観光センターの敷地越しに対岸を見下ろすと、石ころだらけの押し出しの奥にコンクリート堰堤2段を構えて早戸川に合流する小さな沢がある。水流がないから、沢というより溝というほうが当たっていそうだ。
★私有地であるセンターの敷地に踏み入って対岸に渡っても、堰堤を努力して越す意味はないから、あえて立ち入らないほうがいい。
この大杉沢に入るには、地図を見ても分かるように、林道の魚止橋を渡って砂利道を進み、道がヘアピンになる所からから降りればいい。ヘアピンの所から上流に向かって下ると、コンクリ堰堤2段と石積み堰堤1段を越えた所に簡単に降り立てる。下降点の目印としては、この位置が榛ノ木丸からの小尾根の末端にあたり、しっかりした登下降の踏跡がある。ここから沢に降りる。 なんと数時間後にはここに下山してくることになる。
地元の林業関係者や釣り師の話でも、この沢は昔から水流はないそうだ。沢に降り立って見ると確かに水はない。しかし岩はよく磨かれている。 台風や豪雨のときだけ流れるそうだ。しかし、もしこの沢に水流があったなら傾斜もかなり急なので、もっと困難な沢登りを強いられることになりそうだ。
★沢に降りるとすぐに4段ナメ滝で、下2段小滝の上の8m滝は中央から右に移って抜け、その上の幅広10m滝は中央から右、さらに中央を登る。この上でさらに10mナメ滝があるが、乾いているので簡単。
★初めのナメ滝群を過ぎると傾斜が少し緩み、沢床が一面岩で30m以上は続く一枚岩の白く磨かれた見事なナメが現れる。もっとも水流による溝や凹凸があるので、普通にはナメと言わないのかもしれないが。
★この大ナメ上で右から涸れた沢がゴーロで出合うと水がほんの少ししみ出た15mの大岩風の滝となる。遠目には大岩が転がってできたように見えるが、近づくと大きな岩壁であることが分かる。
この先で岩に塞がれたチョックストーン滝が2段続く。1段目3mは右の岩壁に這い上がり、2段目4mは右壁のバンドを登る。(写真では3mチョックストーンが写っているが、すぐ上の直方体っぽい大岩は2段目のチョックストーンで結構巨岩だ。)
★2段CSを登ると、沢はごく最近崩れ落ちたらしき巨岩の転がりで行く手を阻まれる。上を見上げると右岸岩壁が崩壊した跡が鮮明で、こんな大きな岩がコロッとでも動くと人間なんてひとたまりもないので、急傾斜に喘ぎながらも不安定な岩を揺るがさないよう押さえ込んでスタコラ通過する。
★左からのルンゼ状スラブを過ぎると、またまた大岩風の大滝が3段続く。初めの8mは右を、次の8mは左を、最後の5mは真ん中を登る。
この沢はどこまで登ってもゴーロの河原はなく両岸岩壁に囲まれており、息つく間もなく小滝が続く感じだが、この連続する滝を過ぎると、かなり大きな岩がごろごろして あちこちに岩小屋のごとき空間ができている急傾斜の巨岩帯になってくる。
初めの岩小屋群は巨岩を避けて迷路のようにルートを選び、次は左岸が崩れた巨岩崩壊の小滝群を越えると、上空はもっと大きな巨岩に覆われる。沢の上方からなのか側壁からなのかは分からないが、とてつもなくデカイ巨岩(岸壁そのものだ!)に行く手を塞がれる。両岸も大岩壁で、岩の重なりがどこで切れてどこで重なっているのか皆目分からない状態だ。
★行けるかどうか分からなくても、たやすく高巻できそうな地形ではないので、巨岩の狭間を縫って登ると、上の写真の3段目左から2番目の大チョックストーンに行き当たる。
まずはツッパリで写真 左下の段に登って、そこから下の段2mは緑に苔むした側壁と大直方体を突っ張って登り、中間点(白く丸く写っている部分)に起つ。ここから上へ2mの一歩がどうにもホールドがない。写真の直方体風岩の上の岩板にホールがなく、またこの直方体も側面が苔だらけで足が滑ってツッパリが効かない。写真に写っている直方体に持たれかかっている枯れ木は長さ1.5mぐらいなのだが、これを利用することにし、両端の弱い部分を折って短くして、膝上ぐらいの高さの踏み台にして、エイオーで側壁とのツッパリで上の岩板の隙間に足を踏み入れ、上に這い上がれた。(後日、ここの巻きルートを見つけた。「大杉沢本流」のページ参照)
★これでスーパー巨岩帯は終わり、巨岩の上の台地からの見晴らしをしばし楽しむ。眼下に旧丹沢観光センターの宴会棟がよく見える。上流を見やると水流がある。どうしてここから下が伏流になったのか不思議だ。ここで地下足袋にフェルトワラジを付ける。
★水流が現れる3m小滝を釜に入って越えると、傾斜はあまりないが10mの大チムニー滝となる。ヌメッているがツッパリで登ると、さらに小チムニーと小滝が待っている。
左から沢が入り水流が細くなると、またまた巨大な4mチョックストーンだ。水流はないが、左は完全にハングしていて登るのは不可能そう。右はというと、これまたハングした岩が開きすぎてて突っ張りも効かない。右壁は立っているので巻けそうもない。残る左壁を巻くことにする。少し壁を攀じると落口にバンドをトラバースできそうに見えたが、その高さまで登ってみるととてもトラバースできるような壁ではないので、もう少し上まで攀じって右に移動するとちょうど落口真上だ。前方2mぐらいやや下方に潅木があり、そこからルンゼを2mも降りれば沢に戻れそうだ。潅木目掛けバンドをジリジリ横這いして、潅木を握ったら後ろ向きにずり下がって高巻終了。
このチョックストーン上で水は涸れ、右から沢 (実はこの右俣が本流)が出合う。沢床の高さや谷の切れ込みからすると、左(正面)が本流だと思えたので 左(正面)に入ったが、後から尾根に着いて、尾根を登って谷の食い込みを上から眺めた限り、ここでは右俣が本流だったようだ。尾根上から見る限り、本流の方が傾斜も緩やかに源頭に達し、 榛ノ木丸直下の大平からの合流点付近に楽に登り着くことになるだろう。本流については「大杉沢本流」のページを参照のこと。
★さて、ここで進路を正面の「左俣」にとると、すぐに10mチムニーで、もうその上流は急に源流っぽくなってきた。
ガレとドロのルンゼを登っていくと前進が不可能なほどの傾斜になるので、 中洲風の超小尾根に移って高みを目指すと、榛ノ木丸から魚止橋へ至る尾根に登りつく。尾根上にはできたばかりのきれいに整備された仕事道があった。
★仕事道を右に30分も登ると大平(昔県のキャンプ場のあった所)方面からの仕事道と合わさり、もう5分も登ると榛ノ木丸の最高点(1312m)に達する。三角点のある1292m地点はこれより手前、大平からの合流点に近い位置にある。
山頂から先ほどツメ上げた地点を通って下ると、雑木林の間は整備された仕事道があるので迷うことはないが、標高745m付近の植林帯に入るととたんに道が不明瞭になる。植林帯をほとんどまっすぐ下降すると、標高670mあたりで植林帯が終わり疎林帯の小尾根になる。この小尾根上の踏跡は比較的明瞭だ。最後に痩せた 尾根を下ると、今朝大杉沢に下降した林道のヘアピン地点に降り立てた。
榛ノ木丸から伝道へ下山するルートもある。「かやの沢」のページを参照のこと。時間的にはそんなに変わらない。

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