あの山この沢

丹沢、神ノ川ミクボ沢左俣右沢
ミクボ沢の最難関の大滝を越えて
高巻ルートのない大滝の奥は滝の連続する絶景の沢


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ミクボ沢出合

F1(奥)手前の小滝

F2、二段10m滝を上
から見る。上段はチョ
ックストンになっている

二俣右俣の20m滝

二俣左俣の5m滝

傾斜のあるナメ滝

幅広滝からの大滝

大滝左壁に挑む

テラスまでが核心

35m大滝落口
取付右上のテラスか
ら左上し落口に到達

35m大滝上は明るく
綺麗なV字状谷を形
成し、周囲は岩壁

F8トイ状8m滝

F9、10m滝
右の水流を登り、上
部で左に移って直上

F10、5m滝
この沢は滝が連続し
ゴーロの河原はない

F11、5m滝

堰堤のような形の滝

F13、10m滝の上から

岩床が続く

やっとゴーロとなる

源頭の様相の最上部

コースタイム(5人)
神ノ川ヒュッテ560m(20分)神ノ川への下降点615m(5分)神ノ川河原580m
(3分)ミクボ沢出合→(20分)F 2二段チョックストン滝(10m)上650m
(5分)二俣670m(10分)奥の二俣(右沢分岐)下700m(2分)二俣の幅広滝上710m
(170分)左俣右沢35m大滝上(F7)735m(10分)F8トイ状滝上750m
(10分)10m滝(F9)上785m(5分)10m滝(F13)上840m(15分)5m滝(F14)上885m
(15分)ザレの上部920m左の笹薮に入りほぼ水平に藪漕ぎ
(7分)登山道950m(40分)神ノ川林道(8分)神ノ川ヒュッテ

2004年6月26日
神ノ川林道から神ノ川への下降やミクボ沢出合までのルートについては、「ミクボ沢左俣本流(左俣左沢)」や「ミクボ沢右俣」のページを参照してください。
★ミクボ沢は、流程が非常に短く短時間で遡行でき、水量も少なく天候にあまり影響されない(大雨直後は神ノ川本谷が渡れないことがあるので注意!)ので、左右あわせてもう何度も遡行したが、この左俣の右(左俣右沢)だけは、右沢にかかる35m大滝が登れなくて、いまだ未踏の沢だった。「どうにも登れない」、「高巻ルートがない」ことについては「左俣本流(左俣左沢)」のページに詳細を説明してあります。
昨年、東京山楽会の山仲間計4名で挑戦してみて、見るだけで敗退したのだった。今年も同じメンバーにもう1人加え計5名 (東京山楽会)で再挑戦することになった。因みに平均年齢は58歳 半。高巻くなりの方法があれば遡行はできるから何もこだわる必要ないのだが、「どうにも上流へ行けない」となると、ある種の幻の名渓として気になり、我々の1年がかりの課題になってしまったのだ。
はたしてこの沢は本当に名渓に違いなかった。丹沢の沢とは思えないほどどこまでも岩床と滝が連なり、谷は明るくすばらしい沢だった。ほとんどゴーロはなく、滝もどれもこれも適度に緊張させられる難しい滝が多く、あの大滝がなければもっともっと気楽に何度訪れてもいい沢のひとつだと思う。
★5日前の台風6号の大雨、2日前にも雨が降ったせいで、神ノ川本谷も少なからず増水していた。ミクボ沢は普段は水量が少なく面白みが少し欠ける要因にもなっているのだが、今日だけは期待どおり水量もたっぷりあり、さらに岩床の枯葉や泥を全部きれいに押し流してくれて、水流が被りそうなところは側壁にいたるまで全てツルツルピカピカのスラブ岩壁のような景観だ。
出合から入ってすぐにある6m滝F1は水流の右を直登できるが、今回は水量が多くて左から巻いた。直登は、あまり右に寄ると岩がボロボロで剥離するので、水流際から離れないほうがいい。複数人のパーティの場合直下でビレイしては危険だ。
★二俣にかかる左俣の5m滝F3の水流をシャワーで登ると、その上流は歓声をあげたくなるような急傾斜の大スラブ滝のような様相だ。あえて段を区切れば何段にもなっているのだが、枯葉や木っ端、石ころが洗い流され、普段は水の流れていない岩壁も水しぶきでキラキラと光っていた。
★奥の二俣、本流のスラブ状幅広10m滝下で大休止、頭上に覆いかぶさる35m大滝F7の大ハングを眺めながら、精神統一。この幅広滝を登っていよいよ大滝の中間部テラスに挑戦だ。
幅広滝は右の水流から取付き中段のバンドを左端まで移動し、左端にある岩窪を攀じって上の段の泥バンドに達する。ここから右に水平にトラバースして、滝上に達する。トラバースに入るところから大滝の中間部が見通せる。
この滝上の右端(左岸際)に直径12cmぐらいの潅木がっ立っていて、ここがちょうど右沢大滝の中間部左端にあたるので、この立ち木をビレー点として、右上方にあるらしいハング上のテラスを目指す。一歩踏み出すともうそこは大滝中間のハング部分だから、落っこちればいきなり10m下に落ちる。立ち木のそばの岩壁にハーケンが打ち込んであってスリングがぶら下がっているが、ここまでの一歩がけっこう難しい。
スリングを掴めればハング部分際の凹角にトラバースすることは容易だが、ここからテラスに乗り上がるところが、この滝の核心部だろう。凹角上や周り、テラス上にはブッシュが生えてはいるのだが、どれもぐらついているし、凹角自体がハングしていて足場がないのだ。トップが登った後、ロープが斜めに凹角から離れるように振られるので2番手以降なかなかこのテラスまで乗り上がれなくて四苦八苦。結局は、タイブロックやロープマン、プルージックによるユマーリング登攀で突破。
テラスは草で覆われているが、安定して立てる。テラスからは少し左上方向に攀じ登って、木立を掴めればひとまず安全圏だ。あまり左方面へ逃げると、かえって、岩壁が立っているので前進に窮することになる。この立木類は直径15cmぐらいの太さでしっかり安定している。
★落口まで登りきると、登りきった感激と見渡せる上流の美しい緑の渓谷に見惚れ感嘆してしまうだろう。いや、疲れ果てへばりこんで喘ぐだけだったか。そこは断崖絶壁のゴルジュではなく明るく開けたX字状の谷で、しかし周りは見事に岩、岩、岩の岩山だ。苔むした岩と新緑の木立、水量の多い一本の水流が織りなす明るい谷に陰鬱さや険悪さはない。
上のコースタイムでは、この大滝登攀に5人で約3時間かかっていることになるが、凹角が登れなくて振り出しに戻ってやり直したりのロスタイムなどもあり、正確な所要時間は不明だが、取付いて上に抜けるのに要する時間は一人平均15分〜20分ぐらいだろうか。
大滝落口から直ぐ上にあるF8トイ状滝は、下部は突っ張り、上部は水流に足を突っ込んでの楽しい登攀だ。トイ状滝の上からの写真はこちらを参照。
続く10m滝F9は右の水流が登りやすいが、中間部で中央かもっと左までトラバースして上部を乗っ越す。
★この後はさして困難な滝はないが、しばらくは急傾斜の流れの中にいくつもの小滝がかかっている。
★ほとんど水が涸れそうになって現れる10m滝F13は、いちばん右の水流にルートを見つけるほうが簡単だ。
水が涸れてもしばらくは沢床はスラブ状だが、そのうちガレになり、傾斜もましてくる。右俣のような奥壁を形成しないまま山の斜面が抉れただけのような泥混じりのガレになってくると、上部に稜線が見えてくる。落石を起こさないで登るのが困難になってきたので、もう最上部までガレをつめないで、直ぐ左手の笹薮の中に逃げ込み、ほぼ左へ左へと藪をこぐと、風巻ノ頭から100mぐらい下った登山道(東海自然歩道)に出た。藪漕ぎはおよそ7分だ。
★この左俣右沢は、大滝から最後のツメまで、沢が左右に枝分かれすることはなく、すっきりしている。

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