あの山この沢
丹沢、神ノ川源蔵小屋谷
彦右衛門谷の最奥の堰堤上に出合う源蔵小屋谷はナメや
小滝が連続し、藪漕ぎなしで稜線に達するコンパクトな沢
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コースタイム
神ノ川ヒュッテ560m→(40分)広河原725m→
(16分)最後の堰堤上の河原
(源蔵小屋谷出合)830m
→(5分)3mナメ小滝860m→右岸大ガレ→(15分)2m小滝960m
→左岸ガレ→(12分)3m垂直滝1045m→(2分)ゴルジュ始まる1055m
→(10分)二段8m滝上1090m→(15分)二俣(右大ガレ沢)1185m小屋谷
→(20分)稜線縦走路1305m→(2分)源蔵尾根分岐1330m
→(60分)広河原→(35分)神ノ川ヒュッテ
2004年5月15日
★源蔵小屋谷の遡行記録は最近のものは見当たらない。ガイドブックにも載っていない。
古くは昭和22年頃の記録がある程度だ。この記録では、源蔵小屋谷は彦右衛門谷の左俣として紹介され、下降にも利用されている。当時は、林道もなく現在の神ノ川キャンプ場(社宮寺沢出合)付近から神ノ川本流を遡行して広河原まで達してたそうだ。
★神ノ川ヒュッテ前の日陰沢橋を渡るとすぐに車止めゲートがある。そこから所々舗装された神ノ川林道を40分も歩くと広河原に着く。広河原に檜洞丸方面から膨大な石ころ
の押し出しと堰堤で出合うのが彦右衛門谷だ。
★今の広河原は人工的な護岸と延々と上流まで続く堰堤群で、広大な河原とはいいがたいが、神ノ川のここに来るまでの切り立った断崖風景からすれば広い河原に違いない。
★神ノ川林道はここでヘアピンカーブして犬越路トンネルに向かうが、林道脇から堰堤だらけの彦右衛門谷に向かう細い道をたどって進むと、神ノ川の本流から数えて6個目の堰堤をチョイ越しして、やっと沢の川原に
降り立てるが、ここから左岸伝いに7個の堰堤を越さなければならない。
★堰堤全部を乗越して川原に降り立って、正面に沢らしい形状で流れを見せているのが源蔵小屋谷だ。本流の彦右衛門谷は右手から膨大な石ころを押し出している。こちらは出合で見ても流れは源蔵小屋谷の3分の1ぐらいだ。
★源蔵小屋谷に入ると支流の割には水量が多いのに驚かされる。はじめはゴーロの中の流れだが、すぐにナメやナメ小滝が現れる。
★小滝をいくつか越していくと沢は開けるが、左手右岸が大崩壊して巨岩を対岸まで押し上げている。そこを過ぎてもまた右岸の大崩壊だ。そそくさと通り過ぎると2m小滝となる。
★2m小滝を過ぎると、今度は左岸からの崩壊地だ。ここも急いで過ぎると、3m垂直滝となる。この滝は右でも左でも越せそうだが、右の方が落口にすんなり降り立てる。左は枝沢ルンゼに入って本流に下りる所で、さして危険ではないが段差がある。
★すぐにこの沢に来てよかった、期待できそうだとの予感のするゴルジュが始まる。
★狭いゴルジュは小滝や釜が続き、水浴びしたりへつったりして進んでいくと、正面に右から大滝らしき落差の水流が見えてくる。遠くからはゴルジュ最奥の険悪な滝のように見えたが、近づくとそれほどの落差は感じられない。二段8m滝で、下部は約6mの幅広、落口すぐ上に約2mの二条滝がつながっている。
★下段はこの滝の左手にはしるバンドを伝って中間のテラスに簡単に達することができる。ところがこのテラスから上に抜けるのが意外と簡単ではなかった。下から見上げると中段まで行けば後はチョロイと思っていたが、二条の右側の方は水圧がすごく、足場を求めるだけではじきとばされるし、ツルツルの岩でハンドホールドにする手がかりがない。失敗するとすぐ下の滝壺まで吹っ飛ばされそうで、とても水流の中に足場を求める気にはなれない。
★そこで二条の左の方に抜け道を見つけることになるが、こちらはちょうどいい具合に右足用足場に岩の積み重ねがあって少しは上方へ近づけるが、左足は側壁のかなり上にかけるしかない。右手は大岩上部に届くがホールドはない。左手は目いっぱい伸ばして側壁の乾いたホールドをつかめる。体が伸びきった状態からジャンプして左足に加重し反動で右足を落口上に立ち込むには一か八か的な賭けとなるがここはそれしかなさそうだ。失敗して後方へずり落ちるとやはり滝壺へ転落しそうだが、ここ一番踏ん張ってジャンプ、懸垂で体を持ち上げやっとお尻を大岩上に乗っけることができた。右足どころか右膝さえ上げきれなかった。
★この滝は滝壺の一段下から左岸に斜上するクラックがあり、かなり上でザレのルンゼをトラバースして、滝壁を形成する岩稜を乗越せば二段目上の落口に抜けれるかもしれない。
★この二段8m滝すぐ上には3mナメ滝があり、そこを過ぎると、沢は急に傾斜が緩やかになる。
★開けたなだらかな河原を進み、水が涸れると、二俣となる。右は最上部の稜線まで見えるが、完全なザレ状態だ。左はというと、水流が現れまだ奥が深そうだ。当然左に進む。
★傾斜はますます緩やかになり、大きな窪地を小川のようなせせらぎで流れている。この景色は早戸川の原小屋沢やカサギ沢、カヤノ沢の源流部に似ている。
★水も涸れ、なだらかな窪地のすぐ上に稜線が見えると、少しだけ急な草地を這い登ると丹沢主稜の縦走路に出る。左に2分も歩くと金山谷乗越手前の源蔵尾根コース分岐だ。
★源蔵尾根の下山ルートについては「神ノ川金山谷」のページを参照のこと。以前に比べてこのルートを利用する登山者が増えたのか、ほとんど不明瞭な部分はなくなった。